この石棺のレリーフ、なんとも興味深い。これぞマヤ芸術の至宝だろう。中央に仰向けになっている(生→死)のが、石棺の主である亡き王『パカル』。マヤ人独特の風貌、鷲鼻が特徴的だ。この王が、大地の怪物の口に落ちていくところが描かれているらしい。
その怪物の口は、王の肩とヒザあたりに到達している大きなU字型が、垂直のヘビのアゴからなるとされ、地下界の胃袋(死の世界)を表す。お尻の下のひとかたまりが、沈みゆく太陽の怪物(昼→夜)で、王の体から垂直に伸びているのが聖なる木、世界樹(宇宙の中心)で、その左右でさけるほど大きな口を縦に開けているのが双頭のヘビ(王の象徴)。そして木のてっぺんに飛ぶ天の鳥は太陽(天界の象徴)を描いたものという。
なんとも不可思議な絵のレリーフ、フタを横にして見ると、宇宙船を操縦しているように見えるといわれ、古代マヤ人が天文学に秀でたことから、パレンケの王たちは宇宙人ではなかったか! などという突飛な想像もされているほど。
マヤ文明の研究は、いまなお進められ、年々解明されているというが、謎めいたものがまだまだ多くあるのも、その大きな魅力だと思えるのだ。

参考文献:創元社・マヤ文明 クロード・ボーデ、シドニー・ピカソ著
パカル王の石棺とそのフタを模した土産物
碑文の神殿から発掘された石棺。左の写真はメキシコシティにある国立人類学博物館に展示されているレプリカ。中には、翡翠をモザイク状に継ぎ合わせて作った面を付けた王のレプリカが眠っている。縦3.8m、横2.2m、厚さ25cm、重さ5tもあるという、この石棺のフタが有名で、表に描かれているレリーフの絵がさまざまに取りざたされてきた。
右の写真はそのフタのミニミニレプリカ。パレンケ遺跡入り口付近の土産物屋や、敷地内の地面に品物を並べた露店でお土産として売られている。