寺院の境内に足を踏み入れるときには靴を脱ぐ。
こういうことは祈りの場では普通のことだ。
裸足になり厳かな気分でしずしずと建物に近づく。
そう、東洋の遺跡を旅する女流作家のごとく…。

そうしたいのに、そんな優雅な振る舞いは許されない。
地面が熱い! タイルを張ってあったり、
レンガを敷き詰めているのだけれど、
もうチンチンに熱くなっていて、足の裏を焦がすのだ!

つま先立ちになって、ちょちょちょちょんっと小走りに、
「アチアチアチアチアチアチアチアチアチチチチ!」
と、はしたなくも叫びながら建物の入り口に到達する。

端から見るととても滑稽な観光客のオバサンなのだ。